『電人ザボーガー』Σ団編・特撮ロボットヒーローの考察

  • 次回からは装いも新たに恐竜軍団シリーズが開幕、メカアーミィとの戦いが始まる。Σ団ロボットの総称と言えばメカアニマル…と記憶していたが、何十年ぶりの視聴で微妙に推移があると知る。
    • メカアニマル:初期の数体。動物モチーフロボット。組織のサイボーグ犯罪者と組む傾向。
    • 殺人サイボーグ、Ωサイボーグ、メカボーグ:初期〜中期。犯罪者などの人間改造体。
    • Σメカ、ロボット・初期〜後期。モチーフ不定
  • 初期は大門&ザボーガーのタッグに対して指揮官&ロボットとの対戦。エレキアマゾンを筆頭にアパッチドリルなど濃いサイボーグ犯罪者が登場したが、怪ロボットと別個に敵役を創作するのはさすがに難儀だったのか、サイボーグ犯罪者→変身してロボット形態の敵、という流れに。
  • だがザボーガーがとどめをさすその流れでは、大門がその敵を倒せない、ということになる(敵の強大化は作劇上当然なのだが)。やがて大門専用の対戦相手として秋月玄が登場、ザボーガーの対戦枠は改造人間ではなく純正のロボットに戻っていった。
  • こうして怪人枠の推移をみると、ザボーガーよりも大門の活躍に気を配っているように思える。主人公だから当然ではあるのだが、それならザボーガーだけでもよかったのではないか。ここでちょっとロボットヒーローの在り方について考えてみた。
  • ロボットをヒーローに据える場合、ロボット自身がヒーローになるか、操縦されるかのどちらかである。前者の源流は『鉄腕アトム』、後者は『鉄人28号』。鉄人の流れは『マジンガーZ』によって操縦者が直接乗り込んで戦うのが主流となっていく。
  • この『マジンガーZ』が作ったブームは、特撮界にも多大な影響を与える。乗り込んで操縦する巨大ロボ『レッドバロン』の登場である。ザボーガー自体も、頭部から飛行メカを飛ばし、口から武器、パンチも飛ぶ…マジンガーの要素を落とし込んでいるし、メカアニマルとは即ち「機械獣」のことだ。本編ではジャンボマシンダーの改造おもちゃも登場している。
  • ならばなぜロボットのザボーガーだけで活躍させないのか。アトムの流れでいうロボット主人公方式だと、すでに『キカイダー』が存在した。これはロボットものでありながら変身ヒーローでもあるヒット作だが、変身しない『ロボット刑事』も後に続いている。ザボーガーの人間態を大門にする、あるいは単独で活躍するコンセプトでは、すでに番組個性を獲得することはできなかったのだ。
  • 巨大ロボットとしての企画も『レッドバロン』に先を越されている。巨大特撮をやる予算があるなら、Σのジャンボメカは起動前に破壊されはしなかったろう。ロボットを主人公にする手も乗り込んで操縦する手も、もう手垢がついている…だが、ロボットものには等身ものにも応用できるコンセプトがもうひとつあった。『鉄人28号』の外部操縦方式である。これならロボを等身大にすれば巨大特撮も必要ない。
  • しかし、命令するだけの外部操縦方式の操縦者は、原典同様に標的にされると無防備だ。それを補うため、戦う操縦者として設定されたのが大門豊だったのではないだろうか。そう思いいたると、大門の対戦枠を確保するのは、操縦者を狙うΣ団としても当然。操縦者だからこそ戦わなければならないという必然ゆえに、大門の活躍はロボットヒーローと同等以上でなければならなかったのである。
  • さて、先述のように変わってきたΣ団の敵ロボのコンセプト。ブルガンダーやライバル秋月の登場で、敵の強さは大門やザボーガーが対処できるギリギリのところまできてしまった。パワーアップしなければ対処できない敵の登場を図るには、Σ団崩壊は避けられなかったのだろう。より強大なメカアーミィとの戦いで、大門の立ち位置がどうなっていくのか。レギュラーの味方キャラも増えるのは、これまでのロボ&ライバルの2対2のバランスが崩れる不安があるが…残り1クールの活躍も見守りたい。