今週のチャンピオン/『聖闘士星矢 THE LOST CANVAS 冥王神話 外伝』(蟹座9回目)

    • 一筆啓上 業苦強欲が見えた?
  • 暗黒。蟹座マニゴルド渾身の冥界波で、屋敷の形につなぎとめていた霊魂を根こそぎ解放された暗黒祭壇星座のアヴィドは、自身の魂も跳ばされ暗闇の中に在った。今や金も魂も我が手をすり抜け握ることは無い。それでも、多くの憎しみにまみれた強欲の道への再起を想うアヴィドの前に、浮かぶデスクイーン島の仮面!?報復の使者かと思われた仮面の下は、かつての師・祭壇星座のハクレイ。師匠面で導きに来たかと構えるアヴィドだったが、ハクレイは人が人を導くなど傲慢と否定する…道を決めるのは結局自分なのだから。そうして離反したアヴィドの悪事の先に悟りはあったかと問うために。応えて曰く、「満足」と。転生しようとも聖闘士でなくこの道を行くと断言し、師匠からは何も継がなかったと突き放し、背を向けていく…。
  • 暗黒の魂がたどり着く先は、黄泉比良坂。だが、その生存を見越して到来するマニゴルド!贖罪に立ち合わせるためジョーカも伴っている。双方とも魂にダメージを負う身だが、アヴィドの敵はマニゴルドだけではない…屋敷の一部にされた憎しみの亡者が、黒い聖衣にまとわりつく!天国にも地獄にも行けない憎しみを、アヴィドは惰弱と焼き払う。憎しみの数は、力と技で現世を楽しんだ証と、業火の中でうそぶく。その最期にマニゴルドは鉄拳を振り上げ…寸前、拳を止めて問う…満足かと。肯定し、次は地獄で楽しむと宣言して、死の穴へ跳ぶアヴィド。自分が成す事で、それ以上に財を成し得たはずの力ある師匠を、愚かであると証明したかった…強欲の嘲笑は、本当の暗黒に吸い込まれて消えた。迷惑だろうと納得した人生に、憎めない感情を洩らすマニゴルド。一族を奪われて憎むべき相手ながら、ジョーカもそのブレない生き方に、マニゴルドたちと同じ生き様を受け止めて…。
  • 聖域からの戦士ふたりがヴェネチアを去る日。またしてもマニゴルドの財布をあたったジョーカは、少女らしい出で立ちでまぶしく笑う。デスクイーン島に返納する仮面には、自分の金と足で会いに行く…これはそう決めた彼女の仕事納めだ。ブレない生き様を示したマニゴルドと魚座アルバフィカとの、その日の再会をも約して、少女と戦士たちの道は束の間の交わりを経て明日へと続く。
    • 霊魂屋敷が初期巨蟹宮の風味とか前に書いたけど、まといつく亡者とかそれをためらいなく爆殺焼殺とか見るに付け、やはりアヴィドがデスマスクのオマージュだったんだなと。裏とか表の話で進めてきた蟹座編でしたけど、どちらだろうとブレずに進むことで輝くことはできるという、ともすると善と悪がひょっとすると等価値なんじゃないかと思わせられるような。それを憎めないとマニゴルドに言わせることで、デスマスクの生き方もピカレスク的にありなんじゃないかと言ってるような。LCの爆上げ評価で、原作蟹座を相対でさらに下げる風潮にもなったりするけど、それに一石を投じられたようなブレない悪の生き様が強烈。
    • アヴィドが師匠から何も継いでないと念入りに突き放したのは、道を選ぶのは自分ということを納得して、師匠の影響を否定することで師匠の負担を断ち切ってくれたんかなー。自分の思う通りの輝き方をしなかっただけで、師匠の力の程は評価してたわけで。
    • でも力に目がくらんじゃったのはアレだなー、光が強いほど影もってヤツ?自分も輝きたいと受け止めたジョーカが道を分かれても光の中を進んだのとは違う受け止め方だったのが、迷惑な生き様になったって感じ。あ、ジョーカがマニゴルドとの別れでツンデレになったのと対照…いや対称とすれば、今回のアヴィドのハクレイとの別れ際もひとつのツンデレのような気がするなー。
    • 長文打ってるうちにひとつ書き忘れてたので追記ー。今回の外伝において、マニゴルドはなんと、ひとりとして殺害に至っていない!敵の死因は自決と内部粛清と魚座の3通りだけなんですよねー。三下ルマーカは生霊抜いたけど、首領に燃やされそうなとき消しに行ってるし。尋問のためにっていう結果論もあるんだけど、命を尊重するっていうスタンスに矛盾しないように、あえて殺しをやらない方向で話を組んだって気がするよ。(本伝で相手が冥闘士のときは胴切りで殺りに行ってるけど)
    • さて、次の新章は山羊座エルシド編。本伝で単行本2冊に渡る快刀乱麻と、射手座との共闘…蟹座以上にやりつくしてそうな感じではあるんですが…どんな切り口になるのか期待します(聖剣だけに)。