追悼レナード・ニモイ氏 スポックとその他の出演

  • ミスター・スポック役

    • 宇宙大作戦スタートレック』TVシリーズ(以下TOS)のメインキャラクターであるスポックは、尖った耳が特徴の異星人ヴァルカン人。23世紀の惑星連邦の宇宙船USSエンタープライズ号におけるスポックの役職は、副長・兼・科学主任。その豊富な知識と分析力で、主人公カーク船長に進言する立場です。体力も地球人以上ですが、非暴力主義のため格闘では「ヴァルカンネックピンチ(首の神経節を圧迫して昏倒させる技)」を駆使して麻痺させます。記憶を相互に交わす術「精神融合」で、言語を持たない生命とも交流できます。
    • 論理的思考を重んじる性格上、非情な決断を迫ったり、情を重んじる船医ドクター・マッコイと衝突したりします。「悪魔的な耳」の外見通りの非情な冷血漢のようですが、船の安全を第一に考えており必要があれば自分を犠牲にする献身性を備えています。そのことをよく理解するカークやマッコイとは親友であり、マッコイはスポックの無感情ぶりをからかったりもします。
    • TOS2期以降になると、故郷ヴァルカン星や家族が登場し、生い立ちが明らかになります。外交官サレク大使と地球人教師アマンダとのハーフである彼は、ヴァルカン社会に馴染めず艦隊への就職を選んだのでした。論理的になることで戦争のない社会を築いたというヴァルカンにも、謀議や差別、父子の確執がある…スポックが頑なに論理に拘るのも、純血のヴァルカン以上にヴァルカン人になろうとして努力した結果なのです。
    • 劇場版シリーズになると、その論理至上主義にも変化が訪れます。TOS完結編に位置づけられる第6作に至っては、教え子にこう説きます…論理は賢明さの始まりで終わりではない、と。感情を抑える修行に邁進してきた彼ですが、カーク船長とそのクルーを救い・彼らからも救われたのは、スポック自身の感情=人間性の賜物だった…彼自身がようやくそれを認めるに至ったのです。
    • スポックは以降のシリーズにも客演しています。24世紀に舞台を移した『新スタートレック』(以下TNG)では、大使となった姿が描かれました。ヴァルカンから枝分かれした軍事国家ロミュランに潜入し、哲学普及による和平運動を試みていたのです。
    • TNG完結編にあたる映画第10作で、ロミュランは内紛によって歩み寄りの方向を見せます。しかし、映画第11作において設定をリセットするため、ロミュランは災害で滅亡してしまいました。スポックと彼を逆恨む生き残りが過去へタイムスリップした結果、カークの時代が別の歴史を歩み始めます。スポックはこの新しい時間軸の新カークに助言を与え、復讐者に星を壊された同胞の再建に手を貸す余生を送ることとなるのです。第12作でも新スポックとの交信が描かれたのですが、製作が予定されている第13作への登場は叶わなくなってしまいました。

  • スタートレック以外の出演
    • ニモイ氏は『スパイ大作戦』に変装担当のアメージング・パリスとしてレギュラー出演。やや的外れな日本描写のエピソードではカブキ俳優にも扮しています。
    • 刑事コロンボ』「溶ける糸(A Stitch in Crime)」では、全作中で数少ないコロンボを激昂させた犯人役。
    • カーク役のシャトナー主演である『パトカーアダム30』へは、親友の警部役での客演も果たしています。
    • 1995年『新アウターリミッツ』の「私はロボット(I, Robot)」で殺人容疑のロボットにつく弁護士を演じましたが、1964年シリーズでの『アウター・リミッツ(ウルトラゾーン)』「ロボット法廷に立つ(I, Robot)」ではチョイ役の記者役でした。
    • アニメ映画『トランスフォーマー ザ・ムービーガルバトロン役などで、声優にも携わっています。『トランスフォーマー ダークサイド・ムーン』でのセンチネル・プライムは、一度引退宣言した後の復帰作となります。
    • その知名度から本人役で出演することも『ザ・シンプソンズ』『マペット放送局』など一度ではありません。『ビッグバン・セオリー』にはスポック人形に声をアテるネタ出演にも応じています。
  • 次のトレック映画にも出てくれたに違いないと考えるに、この急逝は残念でなりません。しかし、彼が演じたキャラクターは揺るぎ無い存在感を我々に焼き付け、これからも生き続けます。ありがとう、ニモイさん。「ミスター・スポック」に、長寿と繁栄を。