必殺仕事人2009 11話 仕事人、死す!!

  • タイトルえらい内容バレです。まあ、事前にスポーツ紙や番組表雑誌で結果だけ目にしているわけですが…。
  • 今回は15分拡大放送…えー?それって1クール終了だったら前回が拡大版で、延長分を今回の冒頭に持ってきただけなんじゃないのー?…と見るまでは思っておりました。実際は、源太の動向が終始前回から連続しており、合体2時間SP(終)にしてもいい内容でした。以下ネタバレ感想。
  • 今回のやられ人は、見る度に顔がコワくなってる気がするビルゴルディ菅田俊氏、そして、トレンディードラマで一時代を築いた浅野ゆう子さんがメイン。
  • 源太降板はスケジュールの都合とのことで、これが往年の「仕事人」シリーズなら木更津あたりへ引っ込んでほとぼりをさますとこですが、開けてみれば初期の必殺並みにハードな顛末。
  • 前回ラストで小五郎が狙う相手は、仲間の源太か奉行所の良心・大河原伝七さんか…どっちが消えても見る方は痛手でしたが、小五郎の答えは「両方だ」というマシーン並みの冷徹さ。まー、片方だけ残ると後々災いの元になるという意味では最善の選択なんですが。ここで涼次が源太を助けるために伝七さんの気を引いたことで、自分の存在をも気付かせる失策。前回にも増して緊迫した状況を収拾したのは、主水の一芝居。さすが数々の悪人を油断させてきた演技力、一気にその場をなごみムードに。(^_^;)姿の見えない第三者(涼次)に容疑を向け、源太には同心の知人というラベルを貼ることで容疑者の圏外へ排除という巧みなすりかえを行い、小五郎の最善の上を行く最善で場を収めてしまいました。これでごまかされた伝七さんのうかつさよりは、主水の演技達者を讃えるべき。
  • 容疑はウヤムヤになっても、源太のメンタルなピンチは継続。気弱になっているせいか、女詐欺師・お富の甘言にあっさり篭絡される。子どもにその正体を指摘されても尚、信じたいとすがるまっすぐさと弱さ。
  • 結果、源太はそのまっすぐさと甘さ故、命を落とす。対するお富を演じるのは、かつて幾多のドラマでヒロインを演じてきた浅野氏だ。切々と想いを語る源太に、見ている方も想いが重なる。この女は、これで良心の呵責を得るのではないか…浅野氏がただの悪党で終わるとは思えない、と。
  • しかし、浅野氏はそれを清々しいまでに裏切ってくれた。ただの悪党ではなく、一片の良心も持たない大悪党だったのだ。本シリーズでは、かつての青春スターやレギュラー仕事人すら悪人として起用してきたが、衝撃度は今回の浅野氏の比ではない。今作の悪役は弱いと常々言ってきたが、それをくつがえす悪徳。なんというピカレスク
  • 弱い「人間」源太を死に至らしめたお富の悪徳だが、そのむき出しとなった本性が結果としてお富自身を破滅させる。「もう誰も殺したくない」とまで痛切に叫んだ源太をして最期にカラクリ蛇を放たせたのは、その善意を引き裂いたお富の嘲りなのだ。「ワルを仕置きするにはそれ以上のワルにならねばならない」…裏稼業の原理だ。皮肉にもお富の極悪が、源太を最期にして本物の仕事人として完成させたのだ。
  • 源太最後の「仕事」を見届け、その宿業のようなカラクリ紐を断ち切った小五郎は、意外にも在宅にて虚脱状態。妻ふくが以前にも見た小五郎の「背中」…それは仲間を喪ったのが初めてではないことの表れであり、今の仕事人・小五郎に至る道のりを匂わせる表現だ。開始以来ほとんどはじめて描かれる、こう&ふくの小五郎への暖かいまなざし。そして、小五郎もまた、決してマシーンではないという幕切れ。
  • 時に「焼き直し」と同義になりがちの「原点回帰」。それを目指したという本作は、最初はちぐはぐな印象だったが、それは、助走・または胎動であった。今回の一人の仕事人の「誕生」は、全く新たな「原点」の誕生でもあった。『仕事人2009』は、今、本当のスタートラインに立ったのだ。